ホリスティック医学から見たガン治療
ガン、心疾患、脳血管障害の3大疾病は、命を脅かす病気として恐れられてきた。なかでもガンは1981年以来、日本人の死因のトップに数えられている。
現在、ガンで命を落とす人は30パーセントあまり。実に3人に1人がガンに倒れる時代になったのだ。確かにガンは恐ろしい病気ではあるが、医学の発達で完治する人も増えている。
いま、注目を集めているのが代替医療を含めたホリスティック医学での取り組みだ。ここではガンのメカニズムを解説するとともに、「人間丸ごと」をキーワードに、ガン治療に取り組む帯津良一医学博士にホリスティックな視点でのガン治療とは何なのかを語っていただいた。
体内の細胞が目的もなく、過剰に増殖していく状態を腫瘍と呼ぶ。腫瘍には発育速度が遅く、転移や再発をしないタイプと、すさまじい勢いで発育し、転移、再発を繰り返して生命活動に影響を及ぼすタイプの2種類がある。前者が良性腫瘍、そして後者が悪性腫瘍、すなわち「ガン」だ。
ガンはしばしば、ブレーキが故障した車に例えられる。人間の体には10〜100兆個の細胞があり、それらはすべて一定のルールのもとに分裂を行っている。ところがガンはそうしたルールは一切無視。ひたすらおのれの一族を増やすことに終始するのだ。そのもとになるのはたった一つのガン細胞で、それが「分裂を停止せよ」というブレーキが効かない状態のまま、ひたすらクローンを作り続けていく。
では、なぜ分裂停止のブレーキが効かなくなるのだろうか。 細胞という車を操作するのは遺伝子である。アクセルとブレーキを使い分けて正常な細胞をうまくコントロールしている遺伝子も、ガン細胞の操作ではつねにアクセル全開。遺伝子というドライバー自身、ブレーキを踏むことができないか、あるいはアクセルを踏むのをやめられないかのどちらかという状態だ。
どうしてこんな現象が起こるのか。答えは遺伝子のトラブルだ。正常な細胞の中にはガンを引き起こすガン遺伝子と、それをくい止めようとするガン抑制遺伝子が、絶妙なバランスを取り合いながら存在する。それが紫外線や放射線、発ガン性のある化学物質の影響で傷つけられると、ガン細胞の増殖に歯止めがかからなくなるというわけだ。
次に、発ガン性のある化学物質にはどんなものがあるかを考えてみよう。
代表格はたばこである。たばこの煙にはニコチンやベンゾピレン、ニトロソジエチアルミンなどの物質が含まれており、このうちベンゾピレンは発ガン作用があることが明らかになっている。
実際、たばこを吸う人が70歳になったとき、吸わない人に比べて肺ガンにかかる危険性は10倍にもなるという。自分ではたばこを吸わなくても、家庭や職場で喫煙者がいる場合はその煙で肺ガンのリスクが1・5倍になるという説もあり、たばこの有害性は疑いようもない。
食習慣でいうと、カロリー過多の食事はどんなガンにも栄養を与えてしまうことになるので要注意。脂肪の摂取量
と大腸、乳房、卵巣、前立腺、子宮などのガンには関係があるといわれているし、塩分の摂りすぎは胃ガンの原因の一つにも考えられる。脂肪分と塩分を多く含み、カロリーの高い外食に警鐘が鳴らされるのもここに理由がある。
このほか、自動車(特にディーゼル車)の排気ガスや工場の煤煙、建築資材のアスベストなど、環境面
でも注目すべき危険因子は多い。B型肝炎ウイルスによる肝ガンやヒトT細胞白血病ウイルスI型の成人T細胞白血病など、ウイルスが発生の一因を担うガンがあることも挙げておきたい。
では、
「直射日光を避けて」
「たばこを吸わず」
「脂肪分と塩分の少ないカロリー控えめの食生活を心掛け」
「近くには工場もなく、車もあまり通
らない環境で」「アスベストを使っていない家に住んで」
「ウイルス感染に細心の注意を払えば」
絶対ガンにはかからないかというと、必ずしもそうとはいいきれない。細胞分裂の際に遺伝暗号のコピーエラーが生じ、遺伝子が傷つくことがある。しかし、やはり危険因子の存在が身近に多いほど、ガンにかかる可能性は高くなると考えてよいだろう。
ガンのメカニズムと体の防御機能について考えたとき、忘れてはならないのが免疫系である。免疫系とは微生物や外からの異物、無秩序に増殖するガンなどの細胞から自分を守る、いわば「体の防衛団」のようなものだ。
ガンと戦う免疫系で活躍するのが、防衛団の指揮官であるヘルパーT細胞、戦闘部隊のキラー細胞、そして情報収集部隊のマクロファージだ。まず、マクロファージは外敵の存在がないかどうかを調べるために、つねに体内を見回っている。ガン細胞などの外敵を発見するとすぐにヘルパーT細胞に連絡。ヘルパーT細胞はキラー細胞に戦闘を指示し、キラー細胞はガン細胞を撃退するのだ。
免疫系が戦うのはもちろんガンだけではない。病原菌など、外部から侵入するものが主な戦闘相手で、その代表がウイルスである。ちなみにこのマクロファージとヘルパーT細胞、キラー細胞はすべて白血球の中に存在する。
外的要因や遺伝子のコピーエラーで、人間の体の中に一つのガン細胞が生まれるのは決して珍しい話ではない。しかし、正常な体にはガン細胞が自爆する「アポートシス遺伝子」があり、ガン細胞が増殖・暴走することを防いでいる。免疫系の働きもあり、ガンにならないような防御体制は何重にも備わっている。
しかし、この防御体制も時には弱まることがある。それはストレスと過労だ。ストレスも過労も、それ自体がガンを引き起こすことはないが、免疫系の働きを弱めることによって、別
の原因で体内に生じたガン細胞を封じ込められなくなる場合がある。ストレスとガンとの関係が取り沙汰される理由はここにある。
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