合併症
糖尿病そのものより怖い合併症
糖尿病という病気は、血糖値が高くなったり、インスリンの分泌反応に何らかの異常が起こって発病する。
もちろん、これら糖尿病特有の症状も問題ではあるが、それよりも徐々に進行し慢性化してしまう合併症の方が、より深刻な問題となることが多い。
糖尿病とは主に代謝の異常による病気である。しかし、合併症によって血管の障害が多発することから、血管の病気であるとも言われている。
糖尿病による血管障害には二つのタイプがあり、一つは細い血管が障害される「糖尿病性細小血管障害」。そしてもう一つが太い血管が障害される「動脈硬化症(アテローム動脈硬化)」である。
細い血管が障害される糖尿病性細小血管障害には次の3つがあり、三大合併症といわれている。それぞれの最初の文字をとって「シ・メ・ジ」と覚えておくとよい。
1. 神経の病である糖尿病性神経障害
2. 目の病気である糖尿病性網膜症
3. 腎臓の病気である糖尿病性腎症
この3つが中心となり、必ず高血糖で栄養過多であることにつきあたる(3大合併症の具体的メカニズムは後に詳しく説明)。
だが高血糖が長期間にわたって続いた場合、必ずこれらの合併症を併発するのかというとそうではない。その進行状況は人種差、個体差、遺伝的素因、社会的環境など条件の違いも大きく関与していると考えられる。
一方、太い血管が障害される動脈硬化症は、心筋梗塞、脳血管障害、足の壊ソ、糖尿病昏睡などがある。
これらには、加齢によって誰にでも起こってくるものが多いが、糖尿病の場合は通
常に比べて早い年齢で始まり急速に進行していくのが特徴である。
糖尿病患者の死因は、心筋梗塞や脳血栓など、動脈硬化の進行によって引き起こされる病気の頻度が高くなっていることから、この動脈硬化をいかに防ぐかが重要となってくる。
糖尿病性神経障害
糖尿病で血糖値が高い状態が続くと、神経細胞にソルビトールという物質がたまって細胞が変性を起こし、主に末梢神経が障害されていくのが糖尿病性神経障害である。
大人の男性の糖尿病といえば即座にインポテンツと言われるほど、その障害が神経系統にみられることが多い。その特徴は次のようなものだ。
・長い神経から侵されやすい
手の神経よりも足の神経のほうが長いので、足に障害が出やすい。
・左右両方に起きやすい
片方だけの足に障害が起こるのではなく、左右両方に起きやすい。
・興奮から低下へ
初期には神経が興奮することによる過敏症状が現れるが、持続すると神経の働きは低下する。
・他の合併症を伴いやすい
特に糖尿病歴が長くコントロールが悪い場合、目や腎臓などほかの合併症を伴いやすい。
・手足のしびれを伴う
初期は代謝障害が中心に起こるため知覚神経に障害が起き、虚血(血のめぐ
りが悪くなること)を起こして手足のしびれや痛みといった過敏症状が現れる。
・自律神経が障害される
自律神経が障害されることにより、め まい、たちくらみ、腹痛、吐き気、下
痢、便秘、インポテンツ、発汗異常、 排尿困難、起立性低血圧といった症状が出る。
実はこの神経障害が進行すると神経の働きが低下するため、初期にあったはずの痛みやその他の症状を一時的に感じなくなる。
しかし血糖のコントロールを改善し神経の働きを良好にするといった治療が行われると、再び神経過敏症が現れて痛むようになる。
すなわち糖尿病性神経障害には、初期段階で痛みを感じ、進行すると痛みが止まり、治療の経過で改善が見られるとまた痛みはじめるという特質がある。そのため、主治医をヤブ医者であると勘違いしてしまうケースが問題になっている。
三大合併症 糖尿病性網膜性
糖尿病性網膜症は、細い血管が侵される糖尿病特有の目に起こる合併症である。
これは高血糖が長く続いた場合、網膜(カメラにたとえるとフィルムにあたる部分)の中の血管が傷んでくることによって起こる障害である。
この網膜の血管に毛細血管瘤というコブができ、病気が進むにつれて出血が生じ、目が見えなくなるケースもある。
この毛細血管瘤ができた段階で血糖値を正常化させることができれば、視力に影響なく病変を消すことも可能である(これを単純型網膜症という)。
だが放置して病変が進むと、網膜に白斑(血の固り)が生じたり、新しい血管が作り出されたりする。この新しい血管は非常に出血しやすく、硝子体出血を起こして出血部が線維化してしまう。
そのため、ここまで進行すると、血糖値を厳格にコントロールしても失明を免れることは難しい(これを増殖型網膜症という)。
また近視、遠視、乱視が進んだり、まれに眼内の水はけが悪くなって眼圧が高まる出血性緑内障が起きることもある。
その他、水晶体(カメラのレンズにあたる部分)にソルビトールという物質がたまることがあり、その結果
として水晶体が濁って白内障にもなる。
この白内障は通常の眼底検査では見つけることができないので、糖尿病網膜症のある人は1年に1回は眼科で診断してもらう必要があるだろう。
三大合併症 糖尿病性腎症
糖尿病が進み細い血管の障害や代謝の障害が起きると、糖尿病性腎症という腎臓の合併症も起きてくる。
腎臓の役割は血液中の老廃物を尿に濾過して排泄することだが、糖尿病が進行すると体外に排出するはずの老廃物が体内にとどまり、次第に腎臓は機能しなくなる。そのシグナルとして、尿にタンパクが認められるようになるのだ。
この状態がひどくなると、顔や手足にむくみが起こり、腎臓の働きがさらに低下して体内に老廃物がたまり尿毒症へと悪化する。
腎臓が悪いと分かったら、水分の摂りすぎに注意し、たんぱくや食塩も制限して腎臓への負荷をコントロールする必要があるだろう。
糖尿病性腎症が高度に進行すると、血液透析や連続携行式腹膜透析、さらには腎移植を行う必然に迫られるので気を付けたいところだ。
どの合併症も基本は食事療法
糖尿病になって5年以上が経過しており、血糖値のコントロールも悪く、さらには血圧が高かったり、異常に太っている人は糖尿病性神経障、網膜症、腎症になりやすいと考えて、検査をひんぱんに受けるべきだろう。
ただし、こうした合併症が悪化した結果として薬物療法を受ける前に、基本的には食事療法や運動療法を行った方が良いだろう。
食事療法の基本としては、普段食べるものを、糖尿病に合わせた食べ方に変えていくことがポイントとなる。糖尿病のための特別
な食事をするという意識ではなく、健康を維持するための食事と考えた方が気持ちも楽だろう
。
たとえば、野菜や海藻類に含まれる食物繊維には、食後の血糖値の急激な上昇を抑える作用がある。「野菜や海藻は嫌いなので食べない」というのでは、カロリー制限をして体重が減っても、血糖値は大して下がらない。毎食ごとに緑黄色野菜や豆類、海藻などがバランスよく組み合わせられているかを確認したい。
ただし、どのような食材にも言えることだが糖尿病に有効であると聞くや否や、これでもかと大量
に食べてしまうのはダメである。
反対に、「ごはんは血糖値が上がるから食べない」とか「肉は一切口にしない」などと言う人もいるが、ごはんや肉が糖尿病にことのほか悪いわけではなく、エネルギーの過剰(大量
に食べること)が悪いということを理解したい。
主食であるごはんをパンやソバに変えてみても、大好きな肉をがまんしても、結局はストレスからドカ食いをしてしまうのでは意味がない。
日々、栄養のバランスを考え、大量に食べ過ぎず、早食いせず、血糖値を良好に保つことに気を付けたい。また飲酒、喫煙、ストレス、運動不足などに対しても、注意をはらう必要があるたろう。
このように食事などに気を使っても、血糖値が一向に下がらないという場合には内服薬(経口血糖降下薬療法)の治療が必要となるだろう。
ただし、薬物療法を行っているからといって食事などのコントロールをおろそかにすると、合併症は完全には回復しない。まずは食生活を見直すために「食べる」ということや「食品の特徴」などにも興味を持つべきであろう。
昭和女子大学食物科学科講師であり、「シモンと健康を考える会」を指導する管理栄養士の渡邊啓子氏は、最近の食習慣の乱れと病気の関係を次のように指摘している。
「食生活の変化、食事内容の偏り、たんぱく質や糖質のとり過ぎ、野菜の不足、ストレスなどからくるのが生活習慣病といわれる疾患で、特に動脈硬化、心臓疾患、糖尿病(非インスリン依存型)などが増えています。これらの疾病はいずれも合併症を防ぐことが大切で、そのためには有効な栄養を摂取することの重要性を理解してほしいですね」
代表的なものを列記してみると、EPA 合併症を解消、予防するもので魚の脂肪に多く含まれている。
タウリン 血糖値を下げる作用があり、膵臓からのインスリン分泌を促進する。特に貝類、イカ、タコに含まれている。
亜鉛 インスリンの構成成分で、組織や細胞の代謝に欠かせない多くの酸素の構成成分。免疫に関係あり。食物繊維 糖質、脂質の吸収を遅らせ血糖値の急激な上昇を抑える。
ビタミンQ 糖の代謝を改善する。青身魚、鶏のささみ、大豆製品、野菜、牛豚のレバー、魚の肝などに含まれる。しかしレバー類にはコレステロールが多いので注意が必要。
「これらは日常の食生活に不足しがちなものばかりですが、きちんと摂取することを心がけたいものです。私の研究するシモンイモには、これらの栄養分がバランス良く含まれているので利用するのも良いでしょう」
どの食品に血糖値を下げる成分が多いのか、どうした働きがあるのなどを十分に把握した上で、サプリメントや栄養補助食品を利用するのも一つの手である。
|