沈黙の臓器「肝臓」
定期健康診断や血液検査で「再検査」「要注意」と指摘され、あわてふためくのが肝臓病。「沈黙の臓器」と言われる肝臓は、病気になってもはっきりとした自覚症状が少なく、検査で指摘されたり、病状が進んで他覚症状が出るようになって、初めて病気の存在に気がつくことも多い。病気が進行すれば肝硬変や肝ガンといった重篤な事態になるだけに、「沈黙の臓器」の声なき声を聞く姿勢が大切だ。
肝臓の3つの機能
肝臓は人体の「化学工場」と呼ばれ、約2500億個の肝細胞からなり、人体の代謝・解毒・排泄を担っている。
代謝とは、食べ物に含まれる栄養素を体の各部分で利用できる形に変え、貯蔵し、必要に応じて全身の細胞に供給すること。肝臓では、ブドウ糖をグリコーゲンという形で貯蔵し必要に応じて血液中に送り出す。
タンパク質はアミノ酸から血液の重要な構成要素のアルブミンやグロブリンに合成され、脂肪はエネルギーとして使用したり備蓄できるように中性脂肪やコレステロール、リン脂質に合成されている。
また、脂溶性ビタミンのA、D、K、Eなどのビタミンも蓄積する。肝機能障害によってこれらビタミンの吸収・蓄積が低下した場合、ビタミンK不足なら血液が固まらず出血傾向が、ビタミンD不足ならカルシウムの吸収も低下して骨粗鬆症となったりする。
解毒は、体の中に入った薬やアルコールなどの毒物を分解して無毒化させる機能。肝機能が衰えアルコールの解毒機能が弱ると、アルコールの有害物質であるアセトアルデヒドが、水と炭酸ガスに分解されずに体内に残り、二日酔いの元凶として身体に影響を与える。
排泄は、肝臓が血中のヘモグロビンを分解してできたビリルビンや脂肪を合成して作ったコレステロールを胆汁という形にして、十二指腸を経由して体外に排出する機能。
この排泄機能が十分に機能しなくなると、血液中にビリルビンの黄色い色素が増えて「黄疸」が起こり、十二指腸へビリルビンが排泄されずに黄色の色がつかない「白色便」となる。
肝臓病の自覚症状
これらの機能を果たす肝臓は、人体にとって重要な役目を果たしているがゆえに、一部が障害を起こしたり、ウイルスなどで破壊されたりしても、残りの正常な部分が補ってくれる。
こうして役割を果
たしているから、肝臓に障害があっても症状は現れにくい。しかも肝臓には痛みを感じる知覚神経がないので、障害が進んでいても痛みを感じない。少々のことでは音をあげない肝臓が「沈黙の臓器」と呼ばれるゆえんなのだ。
とはいえ、肝機能の低下は体全体に影響が及ぶので、注意深く体を観察していさえすれば早期に肝臓病を発見することも可能だ。
肝機能障害の自覚症状としては、
・酒に弱くなる、二日酔いがひどくなる
・体がだるい、疲れやすい
・食欲不振や吐き気、発熱などの風邪の ような症状
・黄疸(目の白目の部分が黄色く濁っているかどうかで判断する)
などが肝臓チェックの目安の一つになる。
その他の自覚覚症状では、
・手掌親指の付け根や、指先が赤くなる
・胸や背中などに放射状の毛細血管が浮き出るクモ状血管腫
・右肋骨の下付近の鈍い痛み
などが進行に伴って出現してくるので、これらの症状にも注意したい。
代表的な肝臓病
肝臓疾患の代表的なものは右ページの表のとおりだが、代表的なものを簡単に説明しよう。
肝炎とは、肝臓の細胞に侵入したウイルスを攻撃するために、身体の免疫反応が、自らの肝臓を攻撃・破壊することによっておこる炎症。
脂肪肝は、肝細胞の中に過剰に中性脂肪が溜まることにより起きる肝機能障害。脂肪の溜まる原因には肥満やアルコールの過剰摂取、糖尿病などのほか、副腎皮質ホルモン剤の服用やタンパク質の著しい不足などでも起こる。
肝硬変は、肝臓の炎症が繰り返し行われ、炎症によって死んだ肝細胞の部分が繊維化した状態のこと。この範囲が広くなると肝臓全体が萎縮して、代謝や解毒などの機能が充分に果
たせなくなる。
肝臓病の終末像とも言われ症状が進むと「腹水」「食道静脈瘤」「肝性脳症」などの深刻な合併症が出る。
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